妖精の倫理は人のそれとは大きく異なるもので、そして、同じ人族であったとしても、また倫理のあり方は異なります。わかっていたことではありますが──今回の依頼は、そのことを実感する機会になりました。 そして。 ドレイクバロン。 彼の敵は──おそらく私たちにとっては、やや無謀な、手の届かない敵ではあったのでしょう。彼は、おそらく本気を出しては、いなかった。 いや、数の有利があったので、結果として勝つことはできたかもしれませんが、仮に彼が前に立つ誰かに攻撃を集中させていたら? 彼の吐くブレスに、今少しの力が宿っていたら? 誰かの命は、失われていたのかもしれません。 私は、たぶん、そのことが、やっぱりわかっていなかったのです。 備えましょう。選択肢を作ること。 諦めないためにあがく力を、具体的に用意すること。