さようなら、"私" : 日誌
パドマ=ウテナ  (投稿時キャラデータ) 埴輪 2020-05-10

家を出奔して冒険者になってから、"私"はパドマ=ウテナと名乗っていた。
偽名を名乗ればあいつら――両親の目を誤魔化せるから。
親なんていないと思っていた方が寂しくなかったから。

――けれど。お父さんも殺された。お母さんも殺された。
馬鹿親。なんで死んでしまうんだ。
どうせ死ぬなら"私"の知らない間に死んでればよかったのに。
どうして死ぬ直前に"私"を見つけ出して会いに来たんだ。
ズルい。そんなのズルすぎるぞ。
"私"をよく知っている人、皆いなくなってしまった。

だから決めたんだ。
私はもう"私"ではない。
私はパドマ=ウテナ。親なんていない、天才の冒険者。天に選ばれた神童。
蛮族共に一度は遅れを取ったが、上り詰めて誰もが崇める人間になってみせる。
こんな神童を産んだ世界を祝福するために。

……とは書いてみたが。
あの冒険で全部なくなってしまった。名声も、アイテムも。
服を買う金すらも、今日の飢えを凌ぐ金すらも。
裸で手足をへし折られ、変なにおいをつけて泥まみれで帰ってきたからか民どもは私を汚物扱いだ。
しかも、ミノタウロスに乱暴された顔とお股あたりがまだじんじんと痛む。
今すぐ稼ぎたいが、稼ぐための道具がない。
そういえば"私"の父が餞別に金をくれたが、遺体に返してしまって今はもうない。
……そして天才には頼れる親はいない。
どうすればいいんだろう。
どうすればいいんだろう。

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