数日が、たちました。
あの日。私たちが、ディアボロルテナント──「ベルトルト」を討った日から、数日。
まだ、あの一矢を放ったときの、その感覚が、残っています。
狂える優しき蛮族。人族の敵であり、脅威であり、そして、カイくんの父親であった、あのベルトルトを。自ら死を望んだ、哀しい人を。
その、瞬くような時間の中で、私は、矢を放ち。
その一矢が、ベルトルトの命を奪った。
でも。
傲慢かもしれない──それは、あの月の花を摘んだときに、思ったことのはずです。
だけど、それでも。
森の声を聞いて、風の歌を感じて、大地の蠢動を掴んで。
戦場に猛るベルトルトの身体を、感情を読んで。
そうしてたどり着いた、その凪の場所で。
私は、確かに、ベルトルトの心に触れたと。
そう、幻視しました。
それは、ひょっとすると生涯最高の一矢。
私の、ミリカ・リールブランドのたどり着いた、凪の光景。
あの幻の刹那は、儚く消えて、今の私の手元には、もうその残滓しか残っていないけれど。
きっとそれをつかんだときがあったのだと。
私は、信じられる。
ごめんなさい。
ありがとう。
おやすみなさい。
ベルトルト。
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