日付：＊＊＊＊/＊＊/＊＊ 　時刻：深夜2時くらい

やる事も無く、眠気もないのでたまにはなにか書いてみようと思う。
自分の中である考えたことをここに書き留めておくのも悪くないだろ。


昨日、この神殿の神官に数日前の件で一週間の謹慎処分を言い渡された。
「随分と軽く済んだものだな、神官身分剥奪も仕方ないものだろうに...」と考えていたら、神官から"先生"の話をされた。
どうやら"先生"が今回の件を知って、俺を弁明する手紙を送ったらしい。
おそらく「彼をこんな風に育てた私にも責任があります。同等の罰を私にもお与えください。」という内容だろう。いかにもあの人のやりそうなことだ。

"先生"は元々とても優秀な聖職者で、輝かしい未来が約束されていた。
にも関わらず、その道を捨てて国々を回りながらあらゆる人々に説法をした変わり者だ。
もちろん彼の行動は神殿側からとても高く評価されているらしく、そんな聖職者に重い処分を下すことはできないってことでこんな軽い処分になったんだろう。
まったく、次に"先生"に会った時にはどんな礼をにすれば良いのかわからないな。


しかし罰が軽かったとはいえ、あの時の行動はあまりに軽薄であまりに独善的すぎた。
もしも、あの時キュア・ウーンズを打ったせいでマーマン達が敵に回っていたら、おそらく全員無事では済まなかっただろう。
いや、それどころか彼らの名誉すら危険に晒した、まったくもって愚かな行動だった。

だがそれなら、あの時俺はどうすべきだったんだろうか？
ただ救いを乞う眼をしたギルマンを黙って見殺しにするのが冒険者として最前だったのは間違いない。
しかし俺にはそれができなかった、とは言えその結果があれではただ事態を悪化させただけだ。

そう考えて窓からぼーっと夜空を見ていたのが2時間くらい前だった。


夜空を4つの流星が走った。
きっとあれはハルーラ様の導きだったのだろう
意味はすぐに察しがついた。

俺はギルマンと向き合う前に、すぐ側の仲間と真正面から向き合うべきだったんだ。
自らの信条を強引に押し貫くあの行動は間違いだった

第一に、俺は冒険者として素人中の素人だ。
だから彼、彼女ら4人の先人に導きを乞いながら進むべきだった。

スズクは言っていた
「でも折り合いを付けろ。オレ達は依頼を受けてきたんだ、迫害しに来たわけじゃないし穏やかな解決方法を探しに来たわけじゃない。」
彼もナイトメアだ、俺と同じかそれ以上に酷い目にあっていただろう。
それでも折り合いをつけて冒険者として前に進む姿に俺は学ばなければならないものがある。
次に会った時には言いかけていた「ゴブリンのジレンマ」について尋ねよう、何かの導きになるかもしれない。

ライナは口数こそ少なかったが俺を真正面から見ていた、それに対して俺はずっと横を向きながら自分の主張を吠えていた。
はっきりいって俺は卑怯だった様にしか見えない。
次に会った時にはとにかく謝るべきだ。そして彼女と正面で向き合えるようにならなければ。

アルベルトは冒険者らしく
「お前は、俺らを蛮族の回し者に貶めようとしている。そのままやるつもりなら、身内の不始末は俺らがつけるってことになる」と言っていた。
彼らの名誉に泥を塗る行為をしていた俺を正面から本気で怒っていた。彼の冒険者としての誇りの強さは俺も見習わなければならないはずだ。

そしてダグラスは
「人ができることには限りがある。手からこぼれ落ちるものがあることは弁えろ。……全てを拾い上げるには、オジサンらの手は小さすぎる」と言っていた。
彼も神官だからかこの言葉は痛いところをついていた。
これはまさにあの時痛感したことだ。
今の俺一人では許しを乞う者一人たりとも守れず、事態が悪化した時の保障もできない。

だからと言ってそう簡単に諦められるようなものでもない。
”先生”があの時の俺に諭したように、心から自らの罪を自覚し、許しを乞う者は誰でも許しを受けることができるはずだ。
だから彼の言葉に素直に従うことはできない。

そうはいっても、どうすればそれができるかは俺にはまだ分からない。
分からないが立ち止まるわけにはいかない。
今はただ前に進みながら考えていくしかない。

どれほど悩もうと、進み続ける限り極星の導きによっていつかは答えにたどりつけるだろうから。


そろそろ寝よう、流石に遅くなりすぎた。

明日からはここの書庫を借りて今後のために勉強をしよう。
あと少しのところで魔物がなんだかわからないなんてのはもうごめんだからな。



そういや、ここの神官から俺の処分内容を尋ねてきた眼鏡をかけたグレンダール神の神官がいると聞いた。
グレンダール神というと一人心当たりがある、今度会った時にでも聞いてみよう。