自分を呼ぶ声が聞こえると、そんな言葉を残してふらりと人が消えていく。
そんな、最近聞くようになった噂の真相を確かめることが今回の依頼でした。
被害者の共通点から、最初は恨みによる犯行かとも思いましたが、事はそんな簡単なものではありませんでした。
奈落の悪神ジュマの神官により生贄として誘拐されていたのです。
戦いの中、ユアと呼ばれていた神官は歌うように自身に降りかかった不幸を、自身を貪ったモノへの憎しみを語ってみせました。
それが真実ならば、彼女も被害者であったのでしょう。
それが、なんだというのか。
産まれを選べる人がどこにいましょう。
望まぬ生き方をすることになっても、誇り高くある人はいます。
不幸だからなにをしてもいいなどと、そんな方々への侮辱でしかありません。
なにより、あの忌まわしき奈落の魔域に幸福など1欠片とてありはしないのに。
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