あの通り道におった娘には帰りを望まれてるオトンがおる
帰る家もおる。きっと暖かい夕餉を作ってくれるオカンまでおる
そんな娘が他愛もないおまじないみたいなことをせがむんだわ
なんも見知らぬウチらに
なんも警戒心すらなく
子供らしいお願いをして見返りなんて露ほど考えてもなく
ああ
──ああ なんて憎たらしい
安請け合いとかそういうのはうちの詭弁や
ああいう歳端もいかない娘にそんなこと請われたらアリアル姐さんもオーグルはんも喜んで快諾しようとするし
なんだかんだレオンはんも受け入れる
当然のように皆朗らかな善人や。こうなることはわかっとったんや
うちがああ言うたのは、六割嫉妬 残りの二割五分が憎いのと 残りはなんやろ
あんな人の顔色伺ったようないい子ぶった理由なんて欠片もなかったんや
うちもあんな娘みたいになることもあったんやろか。あったんやろな
全部普通だった 全部知らんままでいた あの頃が続いてたら
知って 逃げて ぜんぶぜんぶなにもかもなくなって 共に喜んだ相手も憎しみを晴らす相手もなんにもないうちには
もう 二度と ああいう子にはなれん。
実はこれまでのぜんぶ すべてが夢で 朝起きたら故郷のヤーブロニャの村だったとしても
ああ ほんま 憎たらしい
空に舞うタンポポの綿毛に乗せた憎しみはそんな娘に思われている父親にむけてだろうか
いやそれとも────。
ああやめやめ。日記だとこうぶちまけられても 人相手にこんな腹の内ぶちまけられん
特にアリアル姐さんとオーグルはんにこんなん知られたら 物理的に捻り腐った魂縊り切られかねん
これ終えたら いつもの、なんも意味なく生き残って人の顔色伺ってるモッズ・キュクレや
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