魔女の旅日記その3 : 最新の投稿
セレイネ・エールリン  (投稿時キャラデータ) ゆうなぎはるな 2021-07-06

時として、人は自分の欲望に溺れて自滅するといいます。たとえそれが魔女であったとしても。そしてそれは形を変え呪いとなって関わった人を不幸にするものなのでしょうか。今回は、そんな事件に遭遇した古の国ラダクロアでの体験について書こうと思います。

魔動機がまだ世に知られていないほどの古風な時代を色濃く残す街並みの都市に 私が来たのは、冒険者の店の依頼でこの街に荷物を届けるという仕事を引き受けたからでした。そちらは無事に終えて仲間の方々と食事していた時に、妙な視線で私を見ていた青年にいきなり「お母さん」などと言って抱き着かれた事から今回の事件が始まりました。あ、私はまだ15歳(日記執筆時)で 当然、子持ちじゃありませんので念の為。ちなみに彼、クレストさんに言わせると、私が彼の母親にそっくりだったとの事です(ロケットの中の写真を見せてもらいましたけど確かに瞳の色以外はそっくりの様でした)。
 
 そこで聞いたのは『マリアの瞳』と呼ばれるアクアマリンの宝石に纏わる呪われた話、そしてクレストと名乗った青年の父が神殿から盗み出したことで引き起こされた悲劇でした。この宝石を世に知らしめることになった悪しき魔女マリア(魔女名は伝わっていないのか抹消されているのかはわかりませんが、私は仮名として『強欲の魔女』と名付けてました)の呪われた遺産は、同じ魔女の名を戴く者として放置できないと感じクレストさんの依頼を引き受ける事にしました。彼が言うにはこの街のどこかの誰かが手にしているらしいから、それをなんとしてでも自分の手に取り戻したのちしかるべき場所、魔術師ギルドか神殿に封印するとの事でしたので。
 そのあとは町中を歩き回って、宝飾店や故買屋で聞き込みをしたり(古売屋では店主が私との社交ダンス要求してくるなどという珍事もありましたが。ちなみに社交ダンスは、故郷のユーシス魔導公国のお城に、〝赤月の魔女〟レミリア先生に連れられて行ったことはありますから見様見真似くらいでしたが、うまく踊れました)、その結果、ラダクロアの侯爵家の当主が『マリアの瞳』を持っている事までは突き止めたのですが。

 さて一介の冒険者の、それも通りすがりの冒険者の話を爵位ナンバーツーの貴族であるエドワウ侯爵が「はいそうですか」と信じるとも思えません。なのでアポイント取ろうといろいろ考えたのですがどれもうまくいかず、私達は半分途方に暮れてとりあえず、侯爵家に行ってみたのですが。そこで見たのは半ば魔界と化したかのような異様な光景でした。侯爵家のお屋敷の兵士達は皆、まるで魂を半分抜かれてるかのようなうつろな症状の人や、意識を失って倒れている人達のみ。そして屋敷の中ではエドワウ侯爵自身も倒れていて、誰も動ける人はいませんでした。私達と、そして事件の原因となった『マリアの瞳』を身につけた侯爵夫人リィナさん(の意識を奪った魔女マリア)を除いて。

不意打ちでアクアマリンの中に精神を閉じ込められはしましたが(その中で見せられた過去のマリアの瞳の所持者たちの亡霊には正直うんざりさせられました。やはり『マリアの瞳』を手にしたものは強欲に己の身を滅ぼされた者達だったようです)、やはり強欲の魔女マリアは己の欲望で(特に私を)自らのモノにしようと企んでいたようです。が、無論、私達がむざむざやられるつもりもなく、私達はマリアと『マリアの瞳』と呼ばれていたアクアマリンの宝石をそのまま破壊する事に成功しました。ちなみに最後は、魔女の名を持つものとして私が アクアマリンを破壊し、マリアを同時に消滅させることに成功しました
 
 宝石が破壊される瞬間、私は妙なことに気づきました。『マリアの瞳』に囚われた人達の亡霊の中に、「私にそっくりだという」クレストさんの母親がいなかったことに。そしてその疑問の答えを宝石が砕け散る間際に見てしまいました。その答えは‥‥‥真実は時として、想像以上に残酷なものだというのが私の感想です、とだけここでは記しておきます。

クレストさんと別れる際、彼からプロポーズされましたが、私は旅の魔女、彼の気持ちに応えて上げられない旅人です。彼にはきっと素敵な相手がいつかできる事を信じて、私達は彼と別れました。彼には真実は話す事はなかったのですが、これでよかったと思いたいものです。

それにしても、欲望とは厄介なものですね。人である以上、欲というものは決して切り離すことができないものなのでしょう。私自身も、自分の欲の為に旅人をしているようなものですから。グレンダールの神官さんに言わせると「欲望もまた人の美徳の一つ、但し己を鍛える糧とすれば」との事ですが、旅人として魔女として、私は欲望を糧に何を鍛えているのでしょうね?まぁ少なくとも、欲望に溺れなければ、今回のような『マリアの瞳』の悲劇は 起こさないし起こさせない、と思いたいものです。

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